子育ち支援「種子島四葉の会」をご紹介します。

 

5カ月ぶりに有志が集まり、懇話会を再開

 

今年1月、新型コロナウイルス関連のニュースが日本で初めて報道され、2月には国内での感染が広がり、予定していた行事はすべて延期や中止を余儀なくされました。「種子島四葉の会」も感染拡大を考慮し、定例会を控えていましたが、感染防止対策が整い、幸いにも種子島に感染者が出ていないこともあり、5カ月ぶりに有志が集まり情報を交換し合いました。

 

「種子島四葉の会」は、種子島に暮らす子どもが活き活きと自立して生活していけるように、教育・保健・福祉・医療に携わる専門家たちが、発達障害を中心に特別な支援を必要とする子どもの育ちを支え、促すことを目的に結成されました。

 

この会は、4年前に故郷の種子島に戻ってきた当センターの小児科部長、岩元二郎医師が発起人となり、地元の有志が参集して立ち上げた任意団体です。2カ月に1回、定例会を開いて情報を交換し、抱える問題に対して知恵を出し合い、時に協力しながら解決に向けて動くといったように、かゆい所に手が届く支援ができるよう地域に根差した活動を行っています。

 

 

U君の事例が「しあわせの島」を導く試金石に

10月13日(火曜)の夕方、中種子養学校に医師、教師、保健師、理学療法士、介護福祉士など、14名が集まり、久しぶりに意見交換を行いました。ちなみに定例会は自由参加で、対話を重視した集まりであることから懇話会と称しているそうです。

 

四葉の会では地域の研修ニーズを把握するため、各機関の利用者に対し定期的にアンケートを行っており、初めに集計の中間報告が行われました。施設に設置したアンケート箱には、子育ての悩み、支援への要望など、現場では聞こえてこない生の声が集まり、活動を続けていくうえで貴重な資料となっているようです。

 

次に岩元先生から、本島で初めて経験するという超重症心身障がい児U君の在宅ケアの事例が紹介されました。ねたきりなどの重度の肢体不自由とIQ35以下の重度の知的障害が重複した状態を重症心身障がいといい、日本にはおよそ43,000人いると推定されています。さらに超重症心身障がいとなると、気管切開や胃ろうなど、生存のための高度な医療(医療的ケア)を必要とし、より手厚いケアが欠かせません。

 

U君の、生まれてから現在までの過程、医療経過、生活状況などが報告され、教育、保健、福祉、医療がどのように関わり、どのように問題を解決してきたのか、現場でしか知りえない実情を初めて知り、関わってこられた多くの方々の熱意に頭が下がる思いで聞き入りました。

 

今回の参加者の中には、実際にU君のケアや教育に関わっている方も多く、話は今後の課題にまで及びました。各機関の方々から具体的なアドバイスが飛び交い、中にはすぐに現場に持ち帰って対策を行うという声もあり、まさに教育、保健、福祉、医療の四葉が連携して「種子島の子どものしあわせ」を守る取り組みが行われていました。

 

今回のコロナ禍により、私たちは多くの自粛を求められ、生活スタイルは一変しました。しかし、ケアが必要な障がい者の命、安全な暮らしを守るために、家族を始め関係者のみなさんは、一時も休むことなく知恵を絞って行動していることを改めて痛感しました。

 

「超重症心身障がい児であるU君の事例は、しあわせな種子島を担う教育、保健、福祉、医療の、これからを導く試金石となる」。

 

最後にこう締めくくられた岩元先生の言葉は、コロナ禍のような非常時下にあってなお、希望を失わずに前へ進む種子島の精神を象徴するようでした。当センターが掲げる「しあわせの島、しあわせの医療」への未来は、志の高い方々の連携により着実に育まれています。

 

スタッフブログでは今後、「種子島四葉の会」の具体的な取り組みについても紹介してまいります。