新型コロナ変異株による感染者数の増加が連日報道され、不安の増幅とともに第四波が急速に広まりつつある。種子島も久しぶりの陽性者で島中に緊張が走った。陽性者への対応は初回と違って本院コロナチームによって冷静に進められている。この1年間のトレーニングが功を奏していると言えよう。主要都市には緊急事態宣言が出され、私たちにとってもGWはコロナ禍を耐える連休となった。
さて、私の患者さんの中に回診する毎に「だれ?」と聞く可愛いおばあちゃんたちがいつも何人かいる。認知症は増え続けている病気の一つであるが、有効な治療薬がないままの状況が続いている。本人には病気の意識がなく、比較的健康に恵まれた人たちが多い。症状の一つに物忘れがあり、年齢的な症状との見極めが難しい。そのためか自分はもとより身近な友人や家族の物忘れには敏感にならざるを得ない。読んだ本によれば、物忘れの99%が認知症とは関係ないとのこと。なのでひとまず安心なのだが・・・。
マンガ 「介護する人・される人のきもちがわかる本」の裏表紙には、こんなマンガが描かれている。
「介護してる(されてる)人間のきもちなんて誰もわかってくれない…ねぇシロ」と介護する人も介護される人も、白猫をなでながらつぶやく。つぶやかれた白猫は「あ~ストレスたまる」。
「北川なつ」さんをご存じの方も多いと思う。特別養護老人ホームの勤務経験があり、ケアマネジャーや介護福祉士の資格を取得しているマンガ家で、介護の悩みや本音、介護現場の現状などをマンガと文章で解説している。北川なつさんは女性と思いきや男性だった。この本の「はじめに」のマンガでのセリフ(著者の告白)に共感した。
「みんながいなくなってから思うのは もっときもちを聞いてあげてもっとしてあげられることがあったんじゃないかということ 見えない誰かのきもちはいくら考えたって本当にはわかるはずもないけれど相手を思い、近づくことはできます 一度きりの人生だし、できるだけ人にやさしくしたいです」
治らない病にかかることは絶望という思い込みが、私たちにはあるのではないだろうか。かつて、結核は不治の病と言われたが、治療薬の開発で今では忘れ去られようとしている疾患である。
認知症もそうなるであろうか。そうなって欲しい、出来るだけ早く。誰もが思う願いだが、今はただ、忘れてしまう人を忘れないよう懸命に介護を続けよう。コロナ禍の中だからこそあなたの介護には大きな愛が込められているのではないだろうか。
病院長 髙尾 尊身