種子島医療センター

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よくある質問

11月講話  見えない世界 AIと火星と種子島 ―命の最前線から見上げる宇宙―

 

 

10月20日午前4時41分に火星衛星探査機(MMX)が種子島宇宙センターから打ち上げられた模様をロンドン(BBC放送)で見ることができました。ミッションの解説によると火星の衛星「フォボス」に着陸し、砂や岩石などのサンプルを採取し、地球へ持ち帰る計画で、日本の技術力を絶賛しており、何か誇らしい気持ちになりました。

 

さて、ロケットが大気を切り裂き、宇宙へと挑んでいく。そのニュースに触れるたび、私の胸には一つの大きな問いが浮かんできます。

 

「人類は、なぜ未知の暗闇へ向かって進み続けるのだろうか」

 

最前線の火星探査においては「AI」の自律判断が不可欠とされるそうです。地球と火星との間には、光の速さであっても往復で数十分というタイムラグが生じる。極限の環境下で未知の地表へ無事降り立つためには、地球からの指示を待つ時間はなく、探査機自らが画像を解析し、リスクを算出し、コンマ何秒の判断を下さなければならないのだ。

 

この「遠隔の手が届かない場所で、AIと自律型アルゴリズムが命運を握る」という構造は、実は私たちが向き合う医療の最前線、そして離島医療の生存戦略と深く共鳴している。

 

私たちの医療現場にもAIが浸透しつつある。CTやMRIの画像診断、遺伝子解析、感染症の予測モデル。AIという新たな「耳」と「目」を携えながら、私たちは今日も見えない病気と、患者の心の声に耳を澄ませる。どれほどテクノロジーが進化しようとも、最後に患者の人生や背景にある「語られない事情」を汲み取り、責任を持って手を差し伸べるのは、人間たる医療者の役割だ。

 

宇宙探査も、離島医療も、根底にある哲学は同じである。それは「限られたリソースの中で、未知のリスク(最悪)にどう立ち向かい、命を未来へ繋ぐか」という人類の生存戦略に他ならない。

 

JAXAが種子島から火星へと探査機を放つように、私たちはこの離島の病院から、時代の危機や医療の課題に向かって「しあわせの医療」という希望の光を放ち続ける。

 

 

病院長 髙尾 尊身