1月朝礼講話 —全集中・医の呼吸・コロナ滅の医療—

 

昨年、忽然と現れた新型コロナウイルスは、瞬く間に世界の在り方をガラリと変えてしまいました。急速な感染拡大、そして風評被害もあり、生活様式の転換を余儀なくされ、皆が戸惑いの中で毎日を過ごしています。政治も経済も、私たち医療者も、皆が右往左往、手探りで進むべき道を探す日々が続いています。

 

そんなご時世にあって、「鬼滅の刃」のアニメ版映画が大ヒットし、「千と千尋の神隠し」を抜いて興行成績が歴代1位となったことは非常に興味深い社会現象でした。私は「鬼滅の刃」の原作漫画を全く知りませんでしたし、アニメ好きという訳でもありません。しかし、何故このアニメ映画が子供から大人まで、多くの人々に人気があるのかを知りたいと思うようになりました。そして親愛なる先輩医師S先生の勧めもあり、実際にこの映画を鑑賞しました。

 

「鬼滅の刃」は鬼たちと戦う「鬼殺隊」の少年たちの話です。強大な敵(鬼)に相対する人間たちは、戦闘力や技術が未熟でも、力を合わせ、家族のため、愛する誰かのため、世の人々のために戦い続けます。その姿はとても健気です。私は鬼たちをコロナウイルスに、鬼殺隊をコロナと戦う人間たちの姿に重ね合わせて見てしまいました。

 

医療の現場で働く私たちは「鬼滅」ならぬ「コロナ滅」の医療をしっかりと実践していかなくてはなりません。それに肝要なのはチームワークとお互いを思いやる心です。私は「鬼滅の刃」に「コロナ滅の医療」のヒントを見たような気がしています。そして、相手がどんなに強敵でも、決して逃げたり勝負を諦めたりしない、戦う勇気というテーマこそ、この映画がコロナ禍にある人々に支持される要因の一つではないかと考えました。

 

コロナ対応を担当している下江感染症認定看護師と松本医局長は、昨年暮れに島内初の陽性患者が出たこともあり、気の緩む暇もない年末年始だったであろうと思います。また、職員の皆さんも今までとは異なる正月を過ごしたのではないかと思います。これまでは家族や友達と楽しい時間を過ごすことが当たり前だった正月を、医療関係者として緊張感を持って過ごしてくれた皆さんに大変感謝しています。

 

明るいニュースとして、新型コロナに対する新規ワクチン(m R N A やウイルスベクタータイプ)の有効性が報じられ、ワクチン接種が始まった国もあります。2月には日本でもワクチン接種が始まる予定です。これまでも人類はパンデミックと闘い、勝利を手にしてきた歴史があります。新規ワクチンが人類vsウイルスの有効な武器になると希望を持っています。

 

コロナとの闘いはまだまだ続きますが、私たちは全集中、医の呼吸でコロナ禍の種子島に希望をもたらし、島民の命を守っていきましょう。

 

 

病院長 髙尾 尊身