人事労務用語辞典によれば、「レジリエンス」(resilience)は、一般的に「復元力、回復力、弾力」などと訳される言葉で、近年は特に「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な意味で使われるケースが増えています。さらにレジリエンスの概念は、個人から企業や行政などの組織・システムにいたるまで、社会のあらゆるレベルにおいて備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力としても注目されています。
昨今、職場で受けるストレスや多忙が原因で精神が疲労している人が増えています。大阪なおみ選手がうつ病を告白したことはプロスポーツの世界に一石を投じましたが、WHOも「2030年までにうつ病が世界の主要な疾病負荷になる」と予測しており、長く健康的にイキイキと働き続けるためにも、早いうちからレジリエンスを高めることが大切になります。また、2020年に打ち上げられた米国の民間宇宙船「クルードラゴン」の機体が、搭乗した宇宙飛行士4人によって「レジリエンス」と名づけられたことでも話題となりました。新型コロナウイルスの感染拡大に影響を受けた世界全体が元の状態に戻ることを願って命名されたそうです。
American Psychological Association (2013)によるレジリエンスを育成するための 10 要因があります。
①他者との関係性を築くこと ②危機を乗り越えられない問題であるとはとらえないこと ③変化を生活における一部分として受容すること ④目標に向かって進むこと ⑤断固とした行動を取ること ⑥自己発見の機会を求めること ⑦自分に対してポジティブな認知をもつこと ⑧事実を全体像の中でとらえること ⑨希望に満ちた見方をもつこと(ポジティブ思考) ⑩自分自身を大切にすること(他人と比較することをやめる)
今、私たちは生き抜くことが大変な時代にいるのかも知れません。コロナ禍だからこそ、レジリエンスは私たちの医療現場でもとくに求められる“力”です。
・いまを生き抜く“力”
・逆境を跳ね返す“力”
・折れない“心”
あなたのレジリエンスを高めましょう。
病院長 髙尾 尊身