先月は揺れる総裁の椅子を目指して自民党総裁選が繰り広げられた。過熱した報道のせいかコロナ報道を上回る勢いで久しぶりの政治論争に耳目が集まった。結果は、ご承知のごとく岸田氏が新総裁に選出され、総理大臣となる。これから始まる衆議院選挙の顔でもある。果たして政権の行方はどうなるのか・・・、パンデミックの収束如何では大きな政変もあり得るかも知れない。一方、総裁選で最も注目を集めた河野氏は戦前の予想と異なる結果で、政治は「一寸先は闇」を味わったに違いない。
続いて、国の方向性を決定する重要な衆議院選挙が始まるが、離島ではいまいち盛り上がりに欠けるのは否めない。ただ、私たち医療従事者は、地域医療の視点から候補者の公約を精査したいものだ。また、種子島では馬毛島問題が現実にあるため、日本の安全の視点から国防に関する考え方と公約も大切である。コロナ禍でこの2年間、政治は大きく揺れてきた。結果、政治不信を招いているのも現実だ。これからも総理の椅子は揺れ続けるに違いない。
コロナが流行する直前に、石破茂代議士が種子島を訪れたことを覚えている方も多いと思う。講演会では離島を意識してか、出生率に関して私見を話された。地方創生大臣を歴任していたためか、鹿児島県の離島は出生率が高いにも関わらず人口減少が続いているとの諳んじたデータを次々と提示し、離島が果たす役割は大きいことを明確に示された。喫緊の政治の課題は、いかに人口減少を抑制するかであり、それが最も優先する地方創生だということを強く訴えられた。さすが次期総理として人気第1位のことはあると感心し、期待感が膨らんだ次第である。
ところが、その後世界がパンデミックに襲われ、すべての活動が停止、生活様式も一変し経済への打撃も計り知れない状況に陥った。急転直下、コロナ禍での政治は、コロナ対策に焦点が移り、我が国の医療福祉や少子化対策は二の次となった。さて、これで良いのだろうか? 離島の医療福祉行政は、これで良いのだろうか? 種子島では、すべての行政と経済活動が停止しているかのようだ。医療福祉分野では、高齢者への対応が後手後手になっている現状がある。議員や役所の方々は、stay homeで医療福祉への関心が低くなっているのではないだろうか。ウィズコロナ症候群とは、コロナ患者の後遺症だけではなく、基礎疾患のある高齢者に対するコロナ禍による無関心化が病状を一段と悪化させる症候群でもあると理解したい。
種子島の医療福祉行政は、およそ2年間、コロナ禍で右往左往してきた。今、新政権が有効なコロナ対策を打ち出すことに期待はするが、まずは、住民の健康を守るために、種子島の停滞した医療福祉行政の復活に厳しく注視していくことが私たちの使命でもある。
病院長 髙尾 尊身