オミクロン君に振り回され、夏祭りは中止の侘しい8月だった。その猛暑とコロナ禍の中、鹿児島作業療法学会(OT酒井会長)が「新しい時代に飛び立つ私達」のテーマで開催された。本学会を成功裏に導いたOTの皆さんと素晴らしい演奏を披露した子供たちのひたむきな努力を賞賛したい。また、パラリンピック水泳選手で看護師の伊藤真波さんは「あきらめない心」を私たちに教えてくれた。
さて、毎年9月9日は「救急の日」、この日を含む1週間が「救急医療週間」である。広報誌「市政の窓」9月号の種子島医療センターの広告を是非見て頂きたい。看護部長室の河野由華さんが「救急の日」を題材にデザインした作品である。
覚えているだろうか。2021年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士は、世界に先駆けて大気と海洋を結合した数値モデルを提唱し、二酸化炭素が地球温暖化に影響を与えることを証明、かつ地球温暖化の危険性を警告した。種子島は海に囲まれた素晴らしい環境だが、気象変動による超大型台風の災害を被る可能性大である。また、南海トラフの巨大地震によるシミュレーションでは大津波によって海岸線の町はすべて飲み込まれてしまう。専門家の予測では、これまでに無い最大の試練がすぐそこに迫っている。
種子島医療センターが災害時の緊急医療では何ができるだろうか?
停電対策は喫緊の課題だ。現状は数時間しか自家発電量はなく、医療用水の備蓄は少ない。食料備蓄も2~3日程度である。緊急医療では手術、透析、画像診断検査、血液検査などは必須であるが、動力としての電気と水が必要不可欠である。東日本大震災の反省から、多くの犠牲が予想される大災害への対応には、計画的な予防対策が最も大切であることを私たちは学んだ。災害時医療に関しては、行政を含む他職種との連携と予防対策が急務と思われる。
種子島の救急・災害医療体制は種子島医療センターに依存し、それを担う私たちの役割は重い。「その時どうするか?」ではなく、「その時までにどうするか?」。
今月は種子島の救急と災害医療を真剣に考えてみよう。
病院長 髙尾 尊身