12月講話 AI医療革命前夜

 

2023年も1ヶ月後には過去になります。ただ、2023年はいろんな意味で重要な年であったと記憶されるに違いありません。中でも、コロナ禍からの脱出(?)は嬉しい出来事でしたが、新興感染症への恐怖が去ったわけではありません。本院で、2~3月にCovid-19クラスターが発生したこと、6~7月にはインフルエンザとCovid-19が同時流行したことは記憶に新しいと思います。世界を見渡すと、イスラエルとパレスチナ紛争、3年目に入ったロシアのウクライナ侵攻など、日本社会では人口減少、少子高齢化が進み、混沌とした世界が迫っているようです。

 

一方、嬉しいニュースといえば、大谷翔平選手の活躍によるWBCでの優勝、阪神タイガースの38年ぶりの日本シリーズ優勝でしょうか。38年前には、日航機墜落事故が起きています。その38年前(今から76年前)の1945年8月15日は日本の一番長い運命の日でした。38年周期で何かが起こる・・・暗示的な符号でしょうか。

 

私たち人類がこれまで予想した未来の文明がその通りに実現してきたかといえば、常に想定外のことが起こってきました。たとえば、インターネットが誕生したのがおよそ50年前。そこからわずか25年でスマートフォンが誕生するのを誰が予想したでしょう。AI技術が加速している現在、もはや10年後、いや1年後でさえ予測することが難しいのです。

 

医療分野では、1960年代から始まった皆保険制度は、高齢者が少なく平均寿命も男性が約65歳、女性が約70歳という時代に考えられたシステムであり、現在の少子高齢化、中でも30%以上の高齢者割合を想定したシステムではないため、「制度疲弊」が起きています。来年度の診療報酬改定による医療機関へのダメージ(?)、医師の働き方改革などによって、従来の医療システムの問題が露呈し、カオス状態になることが予想されます。

 

AIが人類の知能を超えて、人間の生活に不可逆的な変化が起こるという「シンギュラリティ」の到来は2045年といわれていたのですが、今では2025~2026年頃と予想され、医療分野の様々な開発もこの影響を大きく受けます。2023年は、これから起こるであろう医療社会の劇的な変化の前触れとなる「AI医療革命前夜」なのです。

 

来る2024年は、医療分野で最も衝撃的な変化が始まる年となるかもしれません。

 

病院長 髙尾 尊身