私が種子島に来て9年が過ぎるが、馬毛島のことは何も知らなかった。少なくとも、高速船あるいは飛行機から眺めるだけの島で、何故か滑走路らしいものが見える島だった。種子島で生活する上で馬毛島は何ら影響もなかったし考えることもなかった。西之表市に属しているらしい無人島との認知しかなかった。しかし、ここに来て西之表市いや種子島に最も影響を及ぼす日本で最も注目される無人島となってきた。
ブリタニカ国際大百科事典および世界大百科事典によれば、馬毛島は種子島の北西方約12kmの大隅海峡に浮かぶ無人島。面積8.4㎢、最高所は岳ノ越岳(71m)の低平な新第三紀層の島。西之表市に属する。周辺海域はトビウオの好漁場で、マゲシカと呼ばれる野生のシカが生息する。
西之表市によると、島は戦後になるまで本格的な開発がなされず、種子島の漁業基地に過ぎなかった。人口増加を見据えて入植事業が始まったのは1951年のこと。小中学校も開校し、59年のピーク時には約110世帯530人が暮らして漁業や畜産業に従事した。70年代半ばにリゾート開発計画が浮上。開発会社による土地買収が進んで島民は次々と島を離れ、80年に無人島となった。
読売新聞(2023年4月6日付け)の記事によれば、1月に着工した米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)移転計画に伴う馬毛島の自衛隊基地建設は今年度、工事が加速する見通し。安全保障環境の変化とともに急速に変貌しつつある。
皆さんも承知のように多くの基地建設関係者が種子島に入島している。予定では大凡5千人程度になり、馬毛島には3千人程度が常駐すると聞いている。これだけの人口増加には対応可能な医療が必須となる。様々な緊急事態を想定した救急医療も必要である。
医療は種子島医療センターが対応することになり、巡回診療を7月15日から開始した。馬毛島診療所も建設中である。救急医療体制は主に鹿児島大学病院および鹿児島市立病院と協力することになった。これから、皆さんが必要とされる場面が必ずやって来ます。その時は、よろしくお願いします。
病院長 髙尾 尊身