12月講話  オセロゲームの如く反転する社会と医療

 

令和6年は、元旦の能登半島地震で始まり、JAL機による羽田空港地上衝突事故と続き、日本中を不安に陥れる事故で幕を開けた。医療分野においては、4月から始まった「働き方改革」、6月から施行されている「診療報酬トリプル改定」は医療従事者や医療機関に負の影響が強く、期待から失望へと反転し、コロナ禍からの栄光への脱出は夢物語に終わりそうだ。

 

また、今年は選挙の年で、衆院選、米国大統領選さらに兵庫県知事選とSNSを駆使した令和の選挙戦が物議を醸している……これからの日本、いや世界の政治や社会は二転三転を繰り返していくのだろう。それは、真実がフェイクに、フェイクが真実へと反転するオセロゲームを想起させる。

 

種子島では馬毛島の自衛隊空軍基地工事が本格化してきた。景気の好反転は馬毛島バブルとも言われて久しい。一方、宿泊施設の確保困難、駐車場所の減少は予測できたはずだが、対応策が打てずに島民の困惑は続いている。

 

白から黒へ反転する、漠とした不安と危うさが覆うオセロゲームの社会……。

 

そもそも、オセロゲームは日本人(長谷川五郎氏が考案、父の長谷川四郎氏がオセロと名付けた)によって考案されたゲームで瞬く間に世界中に広まった。

 

医療分野への応用として、オセロは、脳の前頭葉が鍛えられ、集中力も高められるので、対戦はもちろん、見るだけでも脳の空間把握能力と論理的思考のトレーニングになり、認知症予防に貢献する。

 

また、頭脳と指先をフルに使い、かつ会話も活性化するため、高次脳機能障害のある患者さんのリハビリに利用され、知的コミュニケーションツールでもある。

 

私たちは、回復リハビリ病棟で懸命にリハビリを続ける高次脳機能障害のある患者さんとその家族にエールを送りたい。「諦めず、ゆっくり生きよう!」

 

黒から白へ反転する医療分野のオセロゲームでは、機能回復という希望が必ず次にやって来るのだから。

 

病院長 髙尾 尊身