種子島医療センター

5月講話  種子島の初夏を享受せよ!

 

五月の太陽が照りつけ、生命力溢れる緑が島を覆い尽くす種子島。

春の微睡(まどろ)みは遠い過去、否応なしに夏本番がやって来る。青い空と紺碧の海が織りなす絶景は、私たちを否が応でも高揚させるだろう。

さあ、五感を解き放ち、この島でしか味わえない、鮮烈な「初夏」を全身で享受せよ!

 

口にした瞬間、脳髄を突き抜けるような島の恵みを知ってほしい。太陽を吸い込んだ魚介のプリプリとした食感、大地のミネラルを凝縮した野菜や果物の濃厚な味わい。これらは単なる食材ではない。種子島の風土そのものなのだ。

 

初めてこの地に足を踏み入れた者よ、常識を覆す「ワクワクする夏のワークライフバランス」が君たちを待っている。

 

都会の喧騒を忘れ、自然のリズムに身を委ねる贅沢。そして、その傍らで、離島医療という他に類を見ない経験が、君の医療者としての魂を揺さぶるだろう。

 

夏の離島の朝は、戦場だ。夜明けと共に押し寄せる患者たちの切実な訴え。本土の時間感覚は捨てろ。ここでは、夏時間の流れの中で、研ぎ澄まされた五感と迅速な判断力が試される。夕焼けが水平線を染める頃、その日の激闘を終え、島ならではの安息を味わうのだ。

 

見慣れない症状に戸惑うな。夏の離島には、特有の病魔が潜む。これは、教科書では決して学べない、生きた臨床の証だ。その経験は、君の血となり肉となるだろう。

 

そして、忘れてはならない。夏の暑さは、島に生きる長老たちにとって、時に過酷な試練となる。一人ひとりの呼吸、脈拍、表情の変化を見逃すな。高齢者の看護とリハビリテーションには、これまで以上の情熱と技術を注ぐことを誓え。

 

我々こそが、この楽園の医療安全の最後の砦なのだ。一瞬の油断が、取り返しのつかない事態を招く。島の医療を守り抜くという強固な意志を胸に、己の職務を全うせよ!

 

この島は、君たちに鮮烈な経験と成長、そして忘れられない夏の記憶を約束する。さあ、躊躇うことなく、この熱い島へ飛び込め!

 

 

病院長 髙尾 尊身