種子島医療センター

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よくある質問

10月講話  見えない世界 ―世界のリアルと、広がる乖離―

 

日本の国民皆保険制度は長らく世界に誇るべきインフラとされてきましたが、あまりに長く「安価でフリーアクセスな医療」が提供され続けた結果、国民の間に「医療は無限に与えられるもの」という幻想と無関心を生み出していないでしょうか。

 

■「与えられる医療」という日本特有の幻想

多くの国民にとって、医療システムを維持するための莫大なコストや、最前線で働く医療従事者の自己犠牲は、「見えない世界」の出来事になっていないでしょうか。

 

・コスト意識の欠如:窓口負担の少なさや手厚い高額療養費制度が、医療資源の有限性に対する国民の当事者意識を奪っていないでしょうか。

・受動的な医療消費:「病院に行けばなんとかしてくれる」という受け身の姿勢が、不要な受診やシステムへの過剰な負荷を加速させていないでしょうか。

 

■世界のリアルと、広がる乖離

世界情勢や国際的なマクロ経済の動向を俯瞰すれば、少子高齢化が進む中で社会保障制度がかつての規模のまま永続しないことは明白です。

 

・欧米システムの限界:イギリスのNHS(国民保健サービス)などでは、慢性的な資金・人員不足により専門医の受診まで数か月待ちが常態化し、国民は「必要な時に医療が受けられないリアル」に直面しています。

・構造的な限界点: グローバルな視点で見れば、日本の「低負担・高福祉・フリーアクセス」の維持は、経済的な裏付けのない砂上の楼閣に近づきつつあります。

 

■崩壊の足音と、現場からの防衛戦

国全体を覆う無関心と世界標準との乖離がこのまま進めば、現行システムの崩壊は避けられないという見立ては極めて現実的であり、残酷な未来予測です。国の制度改革や、国民全体の意識が劇的に変わるのを待っていては間に合いません。

 

だからこそ、地域医療の最前線でDXを駆使して独自の効率化を図り、システムを最適化する。そして、「しあわせの医療」を通じて患者さんの人生そのものに介入し、医療への依存から自立へと意識を変えていく取り組みが、唯一の防衛策になるのだと思います。

 

 

病院長 髙尾 尊身