種子島医療センター

4月講話  二刀流 in 離島医療

 

新入職員の皆さん、当院への入職、誠におめでとうございます。皆さんが今日から医療人としての新たな一歩を踏み出すにあたり、メッセージを送りたいと思います。

 

我が国で二刀流と言えば、古くは宮本武蔵ですが、今の子どもたちにとっては、大リーグで活躍する大谷翔平選手の方がよく知られています。その大谷選手の母校である花巻東高の入学案内パンフレットに、ある興味深い文面を見つけました。

 

感謝の「感」は「感じ取れる能力」。感謝の「謝」は「行動で示す」ということ。感謝することは、状況を感じ取り、それを行動に示していくこと。そして、花巻東高校硬式野球部は、カバーリングを大事にしているチーム。ミスや失敗を最小限にとどめるのがカバーリングです。二刀流の原点はこのカバーリングと感謝なのです。

 

では、医療従事者にとっての「二刀流」とは、どのような意味を持つのでしょうか。例えば、医師であれば、自分の専門の診療科だけでなく、総合的な診療の視点も持ち合わせること。看護師であれば、さらなる資格を取得して、看護の範囲を広げていくこと。リハビリスタッフであれば、PTがOTやSTの視点も併せ持って介入できることが挙げられます。

 

しかし、医療における二刀流の本質は、単に「複数の技術や資格を持つこと」だけではありません。最も大切なのは、自分の専門という枠を超えて、患者さんや仲間の状況を「感じ取り」、必要な支援を「行動で示す」こと。すなわち、先ほどの「カバーリング」、そして「感謝」の精神を体現することだと思うのです。

 

皆さんもご承知の通り、私たちが担うこの離島医療の現場は、決して医療資源が潤沢とは言えません。その限られた資源の中で、患者さんの命と生活を守り抜くためには、一人ひとりが自身の専門性を深く磨きつつも、同時に周囲を見渡し、互いの死角を補い合う「二刀流」の姿勢が絶対に不可欠なのです。

 

誰かの手が届かないところへ、別の誰かがスッと手を伸ばす。そのカバーリングの連鎖こそが、最強のチーム医療を作り上げる原動力になります。当院には、まさにこの二刀流を発揮している先輩職員が多数おり、それがこの病院の医療の質を担保している、最大の要因です。

 

新入職員の皆さん。最初は慣れないことも多く、戸惑うこともあるかもしれません。ですが、ぜひ周りを見て、感じて、行動する「二刀流」を目指してください。二刀流はあなたの成長を必ず助けます。そして、皆さんの若い力とカバーリングの精神が加わることで、この離島医療がさらに進歩していくことを、私は心から期待しています。

 

 

“One Crew, One Mission”  みんな仲間、ともに頑張っていきましょう。

病院長 髙尾 尊身