日本人の約2人に1人が一生のうちに罹患するといわれるがんは、今や誰にとっても身近な病気です。高齢化の進行に伴い、がん患者さんの数は年々増加しており、種子島医療センターでも高齢のがん患者さんが増えています。当センターは熊毛地区の地域がん診療病院として、がん診療連携拠点病院と連携しながら、がん治療と患者さん・ご家族への支援に取り組んでいます。
去る1月25日、がんをテーマにした市民公開講座「がんのお話」を2年ぶりに開催しました。会場となった西之表市民会館には多くの市民の皆さまが来場され、がんへの関心の高さがうかがえました。
当日は、髙尾尊身病院長が司会を務め、松下大輔外科部長、庄亮真外科医長、がん化学療法看護認定看護師の山之内信さんが登壇。現在のがん治療、緩和ケア、サポート体制について、それぞれの専門分野から講演を行いました。
がんとはどのような病気か
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講演に先立ち、髙尾病院長は「がんを完全に予防する確立した方法は、残念ながらまだありません。最も大切なのは、できるだけ早くがんを見つけ、適切な治療とケアを受けることです」と述べ、がんの現状をわかりやすく解説しました。
がんは、正常な細胞の遺伝子に何らかの“傷”が生じ、その変異によって細胞が無秩序に増殖することで発生すると考えられています。こうしてできた細胞のかたまりが「腫瘍」で、生命に影響のない良性腫瘍と、身体に悪影響を及ぼす悪性腫瘍に分けられます。この悪性腫瘍を「がん」と呼びます。
通常、体の免疫機能によって異常な細胞は排除されますが、それをすり抜けたがんは、5年から20年という長い時間をかけてゆっくりと成長します。1~3ミリの段階では画像診断での発見は難しく、約5ミリになって初めて見つかることが多くなります。さらに大きくなると増殖のスピードが増し、治療の難易度も高まります。そのため、がんはできるだけ小さいうちに見つけ、早期に治療を始めることが極めて重要です。
それには、高精度な検査機器が欠かせません。髙尾病院長は「当センターでは、先進医療の現場で使用される320列CTや1.5テスラMRIを導入し、5ミリ程度の小さながんも捉える精密検査が可能です」と説明しました。
緩和ケアは、診断されたその時から
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続く講演では、庄亮真外科医長が「がんと痛み~“痛み”の緩和~」、山之内信がん化学療法看護認定看護師が「がん薬物療法について」、松下大輔外科部長が「がんの新しい手術療法」について、それぞれお話ししました。
庄医師は、「緩和ケアは、がんの終末期だけのものと思われがちですが、そうではありません。診断された早い段階から、痛みや苦痛に対応する医療です」と説明しました。緩和ケアでは、身体的な痛みだけでなく、不安や孤独感などの精神的苦痛、仕事や経済的問題といった社会的苦痛、人生の意味や価値観に関わるスピリチュアルな苦痛も含めた『全人的苦痛(トータルペイン)』を対象に支援を行います。
「症状や状況に応じて最適な鎮痛薬を選択でき、多職種の医療スタッフが患者さんに寄り添います。がんと診断されたら、ひとりで抱え込まず、ぜひ勇気を出して相談してください」と呼びかけました。
患者さんを一人にしない、がんのチーム医療
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「がん薬物療法」については、山之内認定看護師が、認定看護師の役割とともに解説しました。認定看護師とは、高度な知識と技術を生かして質の高い看護を提供する看護師で、当センターには、がん化学療法看護、緩和ケア看護、感染管理の3分野の認定看護師が常勤しています。
がん化学療法看護認定看護師は、抗がん薬治療に特化した専門職で、患者さんが安全・安心に治療を受けられるよう、治療中の不安や副作用への対応、生活面の支援まで幅広くサポートします。
現在のがん薬物療法は、がんの種類や進行度、患者さんの生活スタイルを考慮し、多くの選択肢の中から治療法を選ぶことができます。副作用も以前に比べて軽減され、自宅で治療を続けることも可能になっています。
山之内さんは、「当センターでは、科学的根拠に基づいた標準治療を提供し、多職種によるチーム医療で患者さんとご家族を支えています。がん治療では患者さんを決してひとりにすることはありません」と力強く締めくくりました。
種子島で受けられる、世界水準の手術
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「がんの新しい手術療法」については、松下外科部長が実際の映像を交えながら説明しました。近年は、身体への負担が少なく、回復が早い腹腔鏡下手術が増えており、種子島でも世界水準の外科治療が受けられることが紹介されました。
松下医師は、昨年4月に鹿児島大学病院から当センターに赴任。米国のMD Anderson Cancer Centerでの留学経験を持ち、これまで数多くの手術を手がけてきた外科医です。講演の最後には、「24時間体制で患者さんを受け入れています。何かあれば、いつでもご連絡ください」と呼びかけました。
当センターでは、がんに関する相談窓口「がん相談支援センター」を設置しており、どなたでも無料でご利用いただけます。治療や副作用、経済的な不安、支援制度、ご家族の悩みなど、当センターを受診されたことのない方もお気軽にご相談ください。
また、がんに特化した検診として「肺がん発見コース」「消化器がん発見コース」を実施しています。がんから身を守るためには、早期発見と早期治療が何より重要です。気になる方は、ぜひ一度ご検討ください。
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