5月朝礼講話―「思い込み」の解除は難しい―

 

私たちは普段の生活の中、かなりの頻度で「思い込み」をしているのではないでしょうか。
私も「思い込み」をよくする一人です。昨日、鹿児島から高速船に乗ってこちらに来ました。
これまで300回以上利用していますが、船内に忘れ物をしたことが何度かあります(年のせいかもしれません)。
座席前のポケットにメガネや携帯を入れていると、つい忘れるのです。
高速船の事務所に電話して取りに行く時は何か嫌な感じ(自己嫌悪ですね)がします。

 

今では、座席を立つときに必ずチェックしています(指差し呼称のように)。今回も携帯とメガネのチェックをして下船しましたから置き忘れるはずは無いのです。
しかしながら、帰宅してメガネをと思ったら・・ポケットに入っていないのです。
一瞬、何で…と思いましたが、そうか、車の乗り降りの際に落としたかもしれないと考え、まず車の中、次いで港から自宅までの寄り道した所を逆方向に点検しました。
乗降した場所は2ヵ所、港の駐車場とスーパーマーケットの駐車場。
そこで落としたなら車に踏みつぶされているかも知れないと思いながら・・・、しかしメガネは勿論、破損した跡もありません。
どこで失くしたのだろう・・? 船内に忘れていることは絶対に無いのです(強い思い込み)。

 

降りる時の混雑で、ひょっとして船の通路にでも落としたかもしれないと弱気になり、閑散とした高速船事務所を訪ねました。
「船内に忘れたかもしれない(言いたくない言葉です)ので、私が座っていた周辺を点検してもらえませんか」と事務所の方に頼みました。自己嫌悪に浸りながらの帰宅。
やっぱり船外のどこかで落としたのだろうと諦めていたのですが、その時、事務所からの電話。
「ありましたよ。あなたの席に!」。そんな馬鹿な…と思うと同時に届け出て正解と嬉しく思う気持ちが交錯しました。

 

いつ落としたのだろう?と考えてみたが分かりません。
メガネはポケットにあると確認後、中の席から通路に出ようとした瞬間の1~2秒間の出来事だったに違いないのですが・・。
確認したことによる絶対的な「思い込み」だったのです。下船した時に「もう一度」確認すれば良かったのですが・・・。

 

本院のリスクマネージメントで報告されるヒヤリハットの幾つかは思い込みが原因です。
最終チェックをいつ、どこで、どのようにするかが大切なのですが、「思い込み」の解除は本当に難しいと思います。
結局、「指差し呼称」そして「ダブルチェック」が医療安全の基本なのです。

 

髙尾 尊身