今年の2月は例年になく大きな話題で盛り上がったのではないでしょうか。
まず冬季オリンピック、これだけで何時間もトークが出来る話題に溢れていました。
メダルに輝いた選手のコメントを集約すると「絆は大きな力を生み出す」ではないでしょうか。
一方、医療の話題ではインフルエンザ大流行でしょうか。
私たちも抑止大作戦を敢行したのですが・・・。
さて、「恋に溺れるのが18歳、風呂で溺れるのが81歳」と言いますが、頭をガツンと殴られたような興味深い医療記事を読んだので掻い摘んで紹介したいと思います。
65歳以上の高齢者患者の自立度について、「高度要介護」、「中等度要介護」、「軽度要介護」そして「自立」の4群に分け、各群の有病率予測値を割り出し、次いで将来の社会的介護の需要を明らかにしたイギリスの研究報告です。
結論は、驚いたことに平均余命の延長は、健康寿命の延伸によるというよりも、要介護期間の延長をもたらしていることが明らかとなり、2025年までに英国内で新たに7万以上の介護施設が必要になると試算された。
すなわち、20年間で延びた平均余命のうち多くの期間が、介護を要する期間であったことを示したのです。
この事実は、ここ種子島でも私は実感していますが、皆さんはどう思いますか。
医療行政が「健康寿命を延ばそう」と声高に重視する理由は簡単で、要介護期間が税金も払わないのに莫大な医療費を使う期間だからなのです。
「健康寿命の延伸」のための医学の発展は必要であるが、医学の発展の結果として平均余命が延びていることを忘れてはならない。
これは警告のメッセージなのです。
すなわち、「健康寿命の延伸」と「要介護期間の短縮」があまりに強調されると、自立していない高齢者を疎外・蔑視する危険な発想が忍び寄り、「依存すること」を否定する風潮につながるのではないだろうか。
そもそも人間は一人では生きていけない。
健康寿命を延ばすことは大切だが、障害との共存の在り方(人にしか出来ないこと)が、これからの高齢者医療のキーワードとなるだろう。
そして、このメッセージは、私たちが取り組んでいる介護医療の歩みを勇気づける。
髙尾 尊身