先月、長女が成人式を迎えました。
私が種子島に帰ってきてから生まれた娘で、私たち夫婦が結婚して5年目になってできた子だったので、その喜びはひとしおでした。今だから言いますが、妊娠が分かると夫婦で夜中に病院に忍び込んで、エコー室で我が子を確認し、手を取り合って喜んでいたのを覚えています。
ただ、妊娠したことを人には伝えることは控えていました。先々で何があるか分からないし、自分の幸せをひけらかすようなことはしまいと考えていたからで、わざわざ言わなくてもお腹が大きくなってきた頃にでも、少しずつ伝えていけば良いよねと、嫁と話をしていました。
でも、私は一人だけどうしても真っ先に伝えたい人がいました。私が小さい頃から面倒をみてくれて、大変お世話になった職員のKさんです。年の離れている兄のような存在で、私は今でもついつい「K兄ちゃん」と昔の呼び方で呼んでしまいます。
私はKさんと毎日のように仕事場で顔を合わせてはいましたが、話すタイミングにめぐまれず、どうしたものかと考えていたある日のこと、飲み会の帰りにたまたまKさんを車で家まで送っていくことになりました。二人で夜道を走りながら、絶好の機会だと思い「実は子供ができたんだ」とKさんに伝えると、K兄ちゃんは我が事のように喜んでくれました。
それから20年が経ったのだと思うと、月日の流れの早さを感じざるを得ません。この20年間、自分のできる限りの力を尽くし、無我夢中で診療に取り組んできたつもりです。もちろん至らなかった点も多かったと思いますが、それでも、この20年、一緒に仕事をしてくれた職員には感謝してもしきれません。みなさんがこれまで種子島の医療を支えてきたのは間違いありません。この場を借りて、改めて“ありがとう”の気持ちを伝えたいと思います。
さて、Kさんも相変わらず仕事に来てくれています。勤続年数はゆうに45年以上は過ぎていると思います。今では信頼できるスタッフも増えて、以前よりゆったりと仕事をしているように見えます。Kさんは「もう体力に自信がないよ」と言っていますが、いるだけでいいんです。いるだけでみんな安心します。
そんな、Kさんみたいな存在を目指して、私はこれからも頑張りたいと思います。
令和8年2月
理事長 田上 寛容