最近の話です。
鹿児島に行っていて、会議終わりで家に帰ろうと公共バスに乗りました。乗ってみると、そこまで混雑はしていませんでしたが、座席はほぼ埋まっていたので、前の方で吊革に捕まり立っておくことにしました。
すると、バスが発車して間もなく誰かが私の肩を叩きます。てっきり知り合いが乗っていて私に声をかけたのだと思い振り返ってみると、そこには見ず知らずの若い男性が立っていました。おそらく20代前半の会社員風の方で、その方は私にこう言いました。
「どうぞ座ってください」
席を譲ってくれたのです。そんな言葉をかけてもらえるとは夢にも思っていなかった私は、少し戸惑いながらも「大丈夫ですよ」と丁寧にお断りしました。その後、立ったままバスに揺られながら考えました。
なんで私に声を掛けてくれたのだろう。私とどこかで会ったことがある人だったのか。それとも、よっぽど私が疲れてみえたのか。もしかして、私がとても高齢に見えたのか。などと考えましたが結論はでず、降りるバス停が来たので、私は振り返って、その若者に「ありがとう」とお礼を言ってバスを降りました。
席を譲ってもらったという人生初めての経験をして、家に帰りついた後も、まだ心のもやもやが取れなかった私は、嫁にその話をしました。「どうして彼は席を譲ってくれたのだろう?」すると嫁はこう言いました。「明らかに親子ほど年の差があれば、そうするかもね」
電車に乗ってもバスに乗っても、座席に座ってスマホを見ている人が多い中で、周りを見渡すことが出来て、思いやりの心を持った若者がいたことに感心するとともに、自分は若くないと改めて認識した出来事でした。
相変わらず病院の外来は、毎日のようにごった返しています。
これだけ多いとなかなか目を行き届かせることが出来ないかもしれませんが、だからといって、おざなりにすることが出来ないのが医療の現場です。もちろん、すべての利用者に満足していただくのは難しいかもしれません。ですが、そんな状況の時こそ、職員一人ひとりが周りに目配りをして、寄り添う心をもって患者さんに接していただければ、当院の印象もさらに良くなっていくのではないでしょうか。
職員でも、患者さんでも、そのご家族でもいいです。
今月は、すれ違う人に一言声をかけてみましょうか。
令和8年3月
理事長 田上 寛容