種子島医療センター

田上理事長の講話
令和8年5月

 5才の娘が、プリンセスの風船をうっかり手放してしまい、あっという間に空高く舞い上がってしまいました。


 しっかり持つからという約束で風船を手にしていた娘は、突然のことで泣きそうになり、親の私達も「何でしっかり持たないの!」と思わず叱りそうになったその時。様子を見ていたのか、すかさずキャストの方が娘のそばへ来て、「大丈夫だよ」と声をかけてくださり、同じ風船を急いで用意し、「ミッキーが魔法を使って空から取ってきてくれたよ」と、娘に優しく渡してくれました。


 種子島にディズニーランドはできるのか?

と、職員と話したことがあります。私達病院の職員に、ディズニーランドのキャストと同じようなことが出来るのかという意味です。


 70代の男性に肺癌が見つかり、鹿児島の病院に治療に行きましたが、治療半ばで種子島に帰ってきました。調子が悪くなったら治療を再開したいとも言っていましたが、とりあえず自宅に帰りたいという希望が強く自宅に帰りました。


 病状からは治療の再開は難しい状態で、自宅での療養は本人にもきついのではないかと感じていましたが、訪問看護のスタッフと話して出来るだけのことはしようということになりました。徐々に倦怠感と呼吸苦が強くなり、モルヒネの投与を開始しました。自宅でずっと看ている家族の負担も不安も強かったと思いますが、看護師が昼夜問わず付き添ってくれて、家族もそれほど動揺することなく過ごせているようでした。大好きだった焼酎も薬のひとつと考えて飲み方も話し合って決めました。


 深夜に呼吸が止まったと連絡があり自宅に伺いました。

 本人は穏やかな顔でベッドに横になっていました。ご家族もそれほど慌てることなく最期を迎えることができたようで安心しました。ご家族は訪問看護に入ってくれてとても有難かったと言ってくれました。ご家族も看護師も涙を流しながら抱き合い、悲しみを分かち合っていたのがとても印象的でした。


 私たちは、ディズニーランドと同じようなことが出来ていると思います。

この病院があって良かったと言ってくれるだけで、私たちは頑張ることが出来ます。今月もみなさんと共に頑張りたいと思います。


令和8年5月

理事長 田上 寛容