「一休さん」という名前を知っている方も多いと思います。
私が小さい頃にテレビで「一休さん」というアニメがありました。可愛らしい小坊主の一休さんが、とんちで大人を相手にやり返すという話です。
一休さんは実在の人物です。話の内容はかなり脚色されているようですが、一休さんは室町時代に実在したお坊さんで、一休宗純というのが本当の名前です。当時でもかなり高名なお坊さんなのに、飲む打つ買うなどといったことも何でもやる、とても型破りな方だったそうです。
そんな一休さんの晩年の話です。
年を重ねた一休さんは身体が弱り、床に臥せていた一休さんの周りを多くの弟子たちが囲みます。一休さんが言いました。「わしはもう長くはない。みんな力を合わせて頑張るのだぞ」。それを聞いた弟子たちは言いました。「そんなこと言わないでください。一休さんがいなければ私たちはどうなっていくのか、心配でなりません」。そこで、一休さんは弟子たちに一つの箱を渡して言いました。「もし、この先本当に困ることがあればこの箱を開けてみるといい」。そう言い残して一休さんは亡くなりました。
精神的な支えを失った弟子たちは何とかお寺を残そうと頑張りましたが、それからしばらくして、お寺に一大事が起きてしまいます。弟子たちは頑張りましたが、もういかんともならない状態になりました。
そこで、弟子たちは一休さんが残してくれた箱を思い出し「しょうがない。あの箱を開けてみよう」ということになりました。「もしかしたら沢山のお金を残してくれているかもしれない」などと言いながら喜んで箱をあけてみると、紙が一枚入っていて、そこにはこう書かれていました。
心配するな、何とかなる
最近の医療業界は未曽有の変化の時代となっています。離島では高齢化、過疎化が急速に進み、これから地域医療がどうなっていくのか余談を許さない状況です。
ただ、だからといってこの時代に生きる私たちが将来の心配ばかりしてもしょうがありません。未来のことは誰にも分からないのです。
私たちにできることは、日々行われる目の前の診療に真摯に向きあい、できる限りの力を尽くすこと。そして、あらん限りの知恵をしぼり、将来に向けての備えをすることです。それでどうなるかは神のみぞ知るなのです。
令和7年11月
理事長 田上 寛容