種子島医療センター

田上理事長の講話
令和8年4月

 花の名前が覚えられないのです。

 春に咲き誇る桜ぐらいは分かります。でも、梅と桜を比べると怪しくなります。バラも色が違えば自信がなくなります。ましてや、アサガオとヒルガオなんて同じ花にしか見えません。私が自信を持って言える花の名前は、ヒマワリとチューリップぐらいです。


 花の名前を覚えたいがために、周りの人に聞くと教えてくれます。

この鮮やかな紫の中に黄色が映える花はなんですか?

「パンジーです。よく学校にも植えられているので小学生でも知っていますよ」


このリボンのような可憐な花は何ですか?

「スイトピーです。松田聖子さんの歌で有名になりましたね。」


この木の上に空に向かって咲いている白い大きな花は何ですか?

「モクレンです。春を告げる花です。とてもいい香りがしますよね」


 そんな感じで、みんな親切に教えてくれますが、次に見ても何の花だったかは忘れてしまいます。だから、花の名前に詳しい人を私はとても尊敬します。そして、花の名前が分かる人は、日常のささやかなことにも気づくような、とても情緒深くて、心の優しい素敵な人だと思います。


 目立たないかもしれませんが、病院内外にはいろいろなところに花が置いてあります。玄関前の花壇、廊下の手洗い所の角、事務所の前や階段の窓など、いろんなところにさりげなく置いてある花を見ると、日ごろ診療で緊張の続くみんなの心を和ましてくれます。
 それは、誰かがお願いしたことではなく、花が好きな方がすすんでしてくれています。私はそんな職員がいることを誇りに思います。


 残念ですが、私はこれからも花の名前は覚えられないと思います。

私のできることは、病院を訪れる方々に、花のような安らぎを与えられるような医療を提供することです。

 今年度もみなさんと頑張りたいと思います。



令和8年4月

理事長 田上 寛容