種子島医療センター

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よくある質問

田上理事長の講話
令和8年6月

 90歳をとうに過ぎた高齢の方が外来に来られます。

「調子はいかがですか?」と聞いてみると「たいそか」と答えます。

「薬を出しましょうか?」と聞くと「もうあっちさな行ってよかからいらん」と言われます。


 その言葉に私は何と返したらよいのか分かりません。臨床医として30年、あらゆる場面を経験してきたつもりですが、私はその言葉に対する答えにいつも悩みます。

「まだまだ頑張れ」なんて簡単には言えません。

「あと少しだから」なんて口が裂けても言えません。

「そんなこと言わずに」というもの失礼な気がします。

 
 いろいろ悩んだ末に、最近は「いつ向こうに行くかは神様にしか分からん」と答えます。つまり、神様のせいにしてしまうのです。


 そんな90歳以上の方と接していると、みなさんが毎日何を思い、何を感じながら過ごしているかと考えます。


 私も50歳半ばを過ぎて、若い頃より体が思うように動かなくなっているのを実感します。疲れやすくもなりました。運動してもしなくても体のあちこちが痛んだりもします。それを考えると、90歳以上の方のつらさなど想像もできません。


 もしかしたら、トイレに行くだけでも、若者が全力疾走するぐらいの労力を必要とするのかもしれません。全くお腹が空かないのに、私たちは食事をすすめたり、点滴をしたりしているのかもしれません。ずっと横になって楽に寝ていたいのに、私たちが無理矢理に起こしているのかもしれません。


 外来診療をしていて、きついきついと言いながら病院に通院する高齢者をみていると、長生きすることが人間にとって幸せなのかどうか分からないと感じることがあります。そんな長生きで幸せを感じていない方々に対して、私達が何をしてあげることができるのか。


 神様でない私達にとってできることとは、そのつらい思いに寄り添ってあげること。そして、寄り添うということは、悩みを聞くこと、一緒に笑うこと、共に涙すること、そして笑顔で接するということだと思います。


今月も種子島の皆さんと生きていきたいと思います。



令和8年6月

理事長 田上 寛容