8月はお盆の月です。
お盆の本当の名前は“盂蘭盆会(うらぼんえ)”と言います。
今回は“うらぼんえ”というタイトルの物語です。
チエ子は幼いころに両親が離婚し、祖父母に育てられました。後に結婚した夫には浮気をされ子供ができたと離婚を迫られ、理不尽な目にあってばかりの人生でした。
その年は初盆で、夫の実家に一緒に行くことになりました。
田舎の盛大な法事に、身寄りのないチエ子は肩身のせまい思いをしていました。そんなチエ子に追い打ちをかけるように、親戚一同が集まり、子供のできないチエ子を夫と離婚させようと、ひそかに相談していたのです。
そんな中、盂蘭盆会が始まり、迎え火がたかれた門に親戚一同が集まっていると、あり得ないことに、そこに亡くなったはずのチエ子の祖父が現れました。
祖父は、はした金でチエ子を追い出そうとしている夫の家族に激怒して現れたのです。「わしのチエ子を寄ってたかっていじめやがって!」と啖呵を切ると「じいちゃんに任せな」とチエ子に言い、親戚が話し合う部屋へと入っていきました。
一晩中話し合った後に戻ってきた祖父はチエ子に「すまねえ。じいちゃん力になれなかった」と謝ります。結局、祖父も離婚話を覆すことはできなかったのです。
後で聞いた話では、あの気性の激しかった祖父が、ただひたすら頭を畳に擦り付けて「チエ子を追い出さないでくれ」と頭を下げてくれていたのでした。
その後で、精霊流しを見に行ったチエ子は自分のために下げたくもない頭を下げてくれた祖父を想い「じいちゃんはやっぱり最高だ」と送り火を見送るのでした。
この世では天涯孤独になってしまったけれど、祖父に見守られていることがわかって、久しぶりの幸せを感じたチエ子でした。
みなさんも、つらい時や悲しい時に孤独を感じることがあると思います。でも、人は自分の味方でいてくれる人が一人でもいれば生きていけます。そして、味方がいることで、愛とやさしさを見失わずに前向きに生きていくことができます。
あなたの味方は誰ですか? 家族や友人、職場の同僚でしょうか。もしかしたら上司や部下かもしれません。あるいはご先祖様かもしれません。
大丈夫です。あなたを見守ってくれている人は必ずいます。
みなさんが、今月も幸せを感じられますように。
出典:うらぼんえ(鉄道員:浅田次郎著)
令和8年8月
理事長 田上 寛容