“北の国から”というドラマが大好きでした。
北海道の富良野という厳しい自然の中で暮らす親子の人生を描いた人間ドラマで、私も何度繰り返し観たか分からないぐらいです。
その中でも一番心に残っているのが『’87初恋』です。
れいちゃんと一緒にいたいという初恋の情熱で東京行きを決めた純。れいちゃんが家の都合で東京に行けなくなったことで落胆し、東京などどうでもよくなってしまいましたが、蛍に今更そんなこと言わないでと叱咤されます。
純は、中学の卒業式を終え富良野を後にすることとなりました。五郎は、疲れたらいつでも帰っておいでと純を励まし見送ります。送ってくれるトラック運転手に純は会釈をし、イヤホンでウォークマンを聴き始めましたが、運転手は純のイヤホンをひっぱって外し、純にぶっきらぼうに話しかけました。
「ピン札に泥がついてる。お前の父親の手に付いていた泥だろう。そんなもん俺は受け取れん。お前の宝にしろ。一生取っとけ」
渡された封筒の中には、五郎が用意した1万円札が2枚入っていて、泥が付いていました。純は父との思いを巡らせ、涙が込み上げました。そしてトラックは、雪残る北海道を東京へとひた走るのです。
ちょうど私も親元を離れて大学に進学するころだったので、このシーンはとても心に沁みました。テレビをみながら部屋を閉め切ってひとりでおいおい泣いていたのを思い出します。何か自分の人生と重なるものがあったからだと思います。
人の数だけ人生があり、皆が様々な経験をしながら人生を過ごしていると思います。そんな中で、良いことだけの人生という人はいないでしょう。むしろ、人生とはおしなべて、つらく切ないものだと私は思っています。
“北の国から”はドラマですが、実際にこの種子島でも自然の厳しさの中で、つらく切ない思いを抱えながら生活している人達に寄り添い、少しでも役に立てる仕事が出来たらと考えます。そして、これからもみなさんと一緒に、少しの幸せを求めて、この島で共に暮らしていきたいと思います。
最後に、私達の心にも響く黒板五郎の遺言を紹介します。
「ここには何もないが自然だけはある。自然はお前らを死なない程度には充分毎年喰わしてくれる。自然から頂戴しろ。そして、幸せだけをみて、謙虚に、つつましく生きろ」
令和8年10月
理事長 田上 寛容